法律を無視して町発注工事の入札結果や施工業者を隠蔽している福岡県大任町の永原譲二町長が、取材したハンターの記者とのやり取りの中で、「独裁者」としての姿勢を剥き出しに非常識な持論を展開した。
■「資産公開」閲覧は町民だけ
町発注工事の実態を頑なに明かそうとしない大任町。すべての入札結果を隠蔽する自治体は全国どこを探しても存在しておらず、工事現場で掲示されている「施工体系図」まで非開示にする姿勢は異常だ。永原町政下で、数十億円、数百億規模の公共工事が次々に発注されている現状では、違法な隠蔽の背景に町長と業者の癒着があるのではないかと疑わざるを得ない。不正な蓄財はないのか――確認するには、永原氏が保有する不動産や預貯金といった「資産」を調べるしかない。
先月、ハンターの記者が大任町の総務企画財政課に対し、町長の資産公開資料を閲覧できるかどうかの確認を入れたところ「できます」という返事。誰でも見れるのかと聞くと「見れます」と明言したため、28日に大任町役場に出向き、資産等報告書の閲覧を申し出た。ところが……。
窓口でいきなり「閲覧できません」と開き直ったのは、「新任で何も分からない」という同課の課長。「大任町政治倫理条例」の該当箇所を示して(下の画像参照。赤いアンダーラインはハンター編集部)、「町民しか見られない」と言う。
“何日も前に電話で確認した上で来所した。町民だけだというなら、なぜ連絡して訂正しなかったのか”と抗議するが、謝罪するどころか「誰か行かせるとおっしゃったから」「町民が来るかもしれなかった」などと、こちらの言葉を逆手に問った言い訳に終始する。
ならばと、「町民なら閲覧させるのか」と念押ししたところ、「すぐにという訳にはいかないかもしれません」と抵抗が続く。首長の資産公開資料を出し渋る役所など聞いたことがない。理由を尋ねると「決裁がいるはず」という返事だ。「いるはず」などと曖昧な話に納得するわけにはいかない。重ねて“本当に決裁が必要なのか?決裁権者は誰なのか?”と追及したところ、前任者に確認してくると言い出した。
いったん席を外した課長は帰ってくるなり、「決裁は町長がする。町長にお会いになりますか?」と意外な申し出。ついさっきまで「町長は外出しておられます」と言っていたはずと訝ったが、郵送した質問書を黙殺した永原氏が会うというのだから、喜んで町長室に案内してもらった。以下、やり取りの概要である。
■コロナ感染を隠しているわけは?
――なんで町長とお仲間のコロナ感染を公表しないのか?
永原町長:誰が感染したの?――大任町内の病院で陽性判定を受け、田川の市民病院に入院されてと聞いているが。
永原町長:全然違いますけどね。誰が、その、嘘言うておりますかね。――取材源は明かせない。
永原町長:言えんのやったら、俺も答えられん。だからそれが事実ならいいけど、その事実じゃないいろいろなことをね、書かれたっていうのは答えるいわれもないし。そのそれが、例えばどうした、誰がどうしたとかとかいうことは――正月、天ケ瀬の別荘に行ったのではないか?
永原町長:あんた、私がどこに行こうと……。――事実無根と言えば済む話だ。
永原町長:そういうことは、一切、無根であるとかそういうことは……。
■資産公開閲覧決裁「私がいるっち言っとる」
――「町長の資産公開の資料を見られるか」と聞いたら、「見れる」という返事だった。来てみると「見れない。町民だけ」という。非常に不誠実。では、町民なら見れるのかと念を押すと、決裁が必要になると言い出した。本当か?
永原町長:本当です。で、俺の資産公開を?なんで?――取材の一環。町長の決裁がいるのかを聞いている。
永原町長:いりますよ。私がいる。私が知らないと。もう行政の内規の問題だから。外部からウダウダ言われる筋合いは何もないですよ。外部の人からね、なんでそんな決裁がいるんかとか。一つ聞きたいけど、福岡の人がですよ、なんのために私のそれがいるんですかって。それは、私はこんなこと初めてやきぃ。その私の財産を、よそから来た人がね、そんなことも町民でもそんなこと見らんのに、なんでそんなこと来るんかねって。――取材だと申し上げている。
永原町長:いや、だから、ただ取材だけでは……。そしたらね、いや、そりゃー、あんたたちは取材っちいうけども。今現実にいろんなことが行っちょるんですよ、と。あのね、そのうちわかりますよ。お宅のね、お宅に情報を流した奴らがどんな悪いことをしよるか。――奴ら?情報を流した?どういうことか?
永原町長:あのね、お宅が情報をね、大任のことを知らんで書くことは、いろんな情報を貰いよるんでしょ。――取材対象は多岐。多くの人に話を聞く。
永原町長:だから、行ったんでしょ?裏を取りに。例えば、言いますよ?病院に行ったら情報を教えますか?――情報源を答えるつもりはない。話をすり替えずに、質問に答えてはどうか。
永原町長:なら、私も答えるつもりはないじゃないですか。――資産公開の資料を閲覧するのに、あなたの決裁がいるのか?
永原町長:私がいるっち言っとるけん、私がいるんです。――あなたがいると言っているだけ?別に条文化はされていない?
永原町長:それは知りませんよ。――知らない?あなた、自分で何を言っているか分かっているのか?
永原町長:なーんが、私は最高責任者ですから。――あなたが決めたことは絶対だと?
永原町長:またあんた書きゃいいよ。また、あんた独裁的って書けばいいじゃないの。――もちろん、そう書くが。
永原町長:何書いても良いって。
25分ほどのやり取りの中で永原氏は、違法に町発注工事の入札結果や施工体系図を隠すことについて、「それなりの理由がある」と強弁。“法律より町の勝手な理屈が上に来るのか”と問い詰めても、「それなりの理由」を繰り返すばかりだった。
どこまで行っても平行線、資産公開の資料は、最高責任者の自分が決裁しなければ見せられないと断言する。「私の財産を、よそから来た人がね、そんなことも町民でもそんなこと見らんのに、なんでそんなこと来るんかね」に至っては、公人としての自覚がないことを宣言したようなものだ。
やり取りの終盤で、いきなり実際の企業名を挙げて「あんたのところ(ハンター)に情報を流しとる」と決めつけたが、これまで同町が公文書を非開示にするたび理由として挙げてきた《公にすると、人の生命、健康、生活、財産または社会的な地位の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある》とは真逆の行為に、呆れるしかなかった。まさに「独裁」である。
取材の最後、記者は永原町長にあることについての確認を求めた。これに対して町長は――「知りません。答える必要はない」。記者が投げかけたのは、永原町長が否定すれば真っ赤な嘘、認めれば県町村会会長だけでなく当然町長も辞任しなければならなくなる事案についての認否なのである。「答えられない」が本当のところだろう。詳細についての記事は、近く配信する予定だ。