北海道新聞が夕刊廃止へ|「9月末めど」の情報も

ブロック紙・北海道新聞が夕刊の廃止に舵を切った。詳細は現時点で公表されていないが、6月上旬から同中旬にかけて地元ニュースサイトなどで同方針が一定の確度を伴って報じられ、また複数の道新社員・元社員らが既成事実的に「今年の9月末で休刊」と証言しており、廃止はほぼ確定的とみられている。

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道新の夕刊廃止の話題が初めて伝えられたのは、地元・北海道の経済ニュースサイト『北海道リアルエコノミー』が6月2日の正午ごろに配信した記事(⇒コチラ) 。数時間後には『財界さっぽろオンライン』がこれを追いかけ( ⇒コチラ)、また同15日発売の同名月刊誌にも3ページにわたって同旨の記事が掲載された。いずれも本年5月中旬ごろに得られた情報として今秋の夕刊廃止を伝え、財界さっぽろ誌についてはより具体的に「9月末日」をXデーとしている。道新本社は両者の取材に「決まっていることは何もない」「現時点でお答えできることはない」と対応したとされる。

複数の道新関係者によれば、夕刊廃止の方針が社内で浮上したのは5月19日招集の部長会議がきっかけ。同会議は編集畑の各部長が年に数回設ける集まりで、そこで報告された話が会議の参加者経由で編集現場に伝わり、週明けにはOBや部外者などへも情報が漏れるに到ったようだ。報告の受け止め方には関係者間で温度差があり、1カ月を経た6月中旬時点で「まだ検討中のレベル」との認識の部長もいるというが、社内外からは「次の人事も夕刊なしの前提」「例年夏の大規模な異動が今年は秋に後倒しになる」などの声が聴こえており、また先述の「9月いっぱい」という休刊時期も各証言者間で一致していることから、廃止の方針はすでに固まっている可能性が高い。

編集現場には未だ公式な報告が降りていないようで、夕刊独自のコラムなどの扱いがどうなるかは未知数。地方版によっては人気の地域情報欄があり(函館・道南版の「みなみ風」など)、秋以降の去就が気になるところだが、地元読者はもちろん当該欄の担当者へも現時点でなんら説明がないという。昨年12月には道新労働組合が社長団交で夕刊の議論を俎上に載せたが、宮口宏夫社長は「夕刊は11月定数でまだ25万844部もある」と休刊の考えを否定、「今後の部数の推移を見ていくことは大事だが、今は判断を変える段階にない」と言い切っている。年度が替わった4月下旬の団交でも担当常務が夕刊廃止を「具体的には考えていない」とし、その上でこう説明していた(いずれも「道新労組速報」採録の問答から抜粋)。

《静岡新聞が3月いっぱいで夕刊をやめたため、道新の夕刊は地方紙の中で最も部数が多い。これほどまでに読者に支持されている夕刊をやめるということは、考えたくない選択肢だ。しかし、販売店では配達する人が常に不足しているし、紙代も高騰している。夕刊を廃止することによって経営に与える影響がどの程度になるのか勘案したうえで、検討するかしないか判断していくことになる》

これが一転、5月19日の部長会議で廃止の方向となったのが事実だとすれば、会社は労組への説明からわずか20日あまりで方針を転換したことになる。

筆者は一連の報道後の6月16日に道新本社へ取材対応を打診、夕刊廃止について事実確認の質問を寄せたところだが、こちらへの回答は先述「リアルエコノミー」などへの対応と同様、実質ノーコメントとなる可能性が高い。現役記者の1人は会社の姿勢について「削減できるコストの大きさで廃止を検討し始めたものの、影響の大きさを意識して決断できずにいるのでは」と話している。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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