田川市ごみ収集事業プロポーザルに重大疑惑|選定業者入れ替え契約

福岡県田川市(二場公人市長)が今年5月に実施した、ごみ収集業者の業者選定に重大な疑惑が浮上した。

プロポーザルで選定が進められたA、B、C三つの工区のうち、A、B両工区で第一位となった業者がA工区の受注を辞退。C工区の一位企業も、辞退届を出していた。業者選定を無にするに等しい異例の事態。取材したところ、改めて別々の3社が仕事を分け合う形で契約が結ばれていたことが明らかとなった。

市は、プロポーザルの結果を公表していたが、契約結果はなぜか非公表。ハンターが情報公開請求した3社との契約書のうち、選定下位の契約業者名は黒塗り非開示だった。市の異常な隠蔽姿勢は不正の証しともとれ、契約の正当性に疑問符が付く状況となっている。

■プロポーザル一位の2社が「辞退」

問題の事業は、「田川市一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託」。A工区(市内西側の可燃ごみ)、B工区(市内東側の可燃ごみ)、C工区(市内東側の可燃ごみ)に分けて業務委託されるもので、来年4月からの実施に向けて今年5月にプロポーザル方式での業者選定が行われていた。

市のホームページには、A工区とB工区では田川市本社の「早雲商事」が、C工区では同じく田川市本社の「クリーン北部九州」が第一位となった選定結果が掲載されている。

通常なら、この選定結果通りに契約が結ばれるはずだが、現実は全く違うものとなっている。ハンターが同市への情報公開請求で入手した文書によれば、A工区で選ばれた早雲商事が優先交渉権第一位の権利を辞退、C工区一位のクリーン北部九州も辞退していた。

■契約業者の社名は非開示

プロポーザルの意味がなくなる事態だが、市はこの結果をホームページなどで公表しておらず、ハンターが求めた「業務委託契約書」も、選定結果通りに契約が交わされたB工区以外は、新たに決まった業者の名前を黒塗りにして隠蔽を図っている。(*下が、A~C工区の契約書)

■非開示理由への反論

田川市がA、C両工区の契約業者名を開示しない理由として挙げてきたのは、『契約締結以降、業務の本格実施に向けて、請負業者による人材の確保や本誌実施の研修への参加等、段階的に準備を行うこととしており、その準備に支障を及ぼすおそれがあるため』という、他の自治体ではあり得ない非常識な主張。税金を原資とする業務の契約先を事業実施まで隠蔽するということは、市民への説明責任を放棄したに等しい所業といえる。

 事業者名を公表されて困るような仕事を、なぜA及びCの工区を受注した業者は受注しようとしたのか。さらに言うなら、運よくプロポーザルで一位になっていたら、当然社名がホームページに掲載されていたはずで、繰り上げ当選だからといって社名を隠すのは不自然だろう。

『請負業者による人材の確保や本誌実施の研修への参加等、段階的に準備を行うこととしており、その準備に支障を及ぼすおそれがある』というが、各業者はプロポーザルに参加した段階で、提案書に“業務遂行が可能”であることを明記していたはず。そうでなければ選定に残れまい。市側の非開示理由は、「何をいまさら」のこじつけでしかなく、真相は別にあるとみるのが普通だ。

■膨らむ疑念

では、A工区とC工区を受注したのはどの業者か――?業界関係者や市役所周辺への取材によれば、C工区を辞退した会社が2位となっていたA工区の受注に回り、C工区で2位となっていた業者がそのままC工区の業務を受注していた。つまり、A工区を、C工区一位になって辞退したクリーン北部九州が、B工区は選定結果通りに早雲商事が、C工区を同工区2位の別の会社がそれぞれ受注したというということ。3社で都合よく仕事を分け合った形だ。誰もがおかしいと思う結果となっている。

そもそも、C工区でプロポーザル第一位に選ばれながら受注を辞退した業者が、なぜA工区の仕事をもらえるのか?応札前の辞退ならまだしも、落札が決まってから「やっぱりいらない」と言われたのでは、業者選定の秩序は崩壊したも同然だ。C工区は辞退するが、A工区なら請負うというのでは、あまりに身勝手。本来なら指名停止になってもおかしくない行為だろう。市がA工区とC工区の契約先を非開示にしているのは、C工区を辞退した業者がA工区を受注しするという不合理な事実を隠すためではないのか。

こうなると、どうしても明らかにしなければならないのが辞退理由だ。市民が納得する理由が必要となることは言うまでもない。しかし、上掲の「辞退届」にも、市の決裁文書にも理由は述べられていない。やむなく、辞退届を提出した早雲商事とクリーン北部九州に話を聞いた。

早雲商事・役員の話
「もともと、(受注するのは)どれか一つの工区だけでよいと思っていた。Cは不燃物の方だったので、最初から(プロポーザルに)入っていない。もし二つとっても(受注しても)、それはもうできない。人数も新たに集めないといけないし、一工区最低6人で、二工区なら12人。無理。だからひとつの工区でということ」

早雲商事の役員はある意味正直で、もともと一つの工区しか請負う意思がなかったのだと話す。理由も単純で、2工区になると仕事をさばけないからだという。しかし、プロポーザルの提案書は自社の請負能力を否定するものではなかったはず。だからこそ、A、B両工区で選定一位になったのだ。それが選定結果が出てから「できません」という姿勢には、首を傾げざるを得ない。

クリーン北部九州の方は、“取り付く島もない”という対応だった。こちらが名乗って“”田川市のごみ収集運搬事業のことについてお尋ねしたい”と言ったとたん、つっけんどんに「おたくに話すつもりはないんですけど」「答える必要はない」。辞退理由について聞きたいだけだと説明しようとするが「おたくに話す義務はないですね」とケンカ腰で、逆に「この携帯番号は誰に教えてもらったんですか」と凄まれてしまった。記者がかけたのは、田川市が発行している事業系ごみの許可業者一覧に掲載されていた同社の固定電話の番号。転送されたものを勘違いしたのだろうが、話も聞かずに憤りを露わにする態度には呆れるしかなかった。

実は。同社がC工区を辞退し、A工区を受注したことには別の意味で大きな疑念が生じる。C工区の業務委託料が約1億4,000万円であるのに対し、A工区は約2億3,400万円。クリーン北部九州は、不当とみられてもおかしくない「辞退」で、1億近い利益を得たことになるからだ。

■識者からも厳しい意見

田川市のごみ収集運搬業務の業者選定を巡っては、プロポーザルの選定過程のうち評価委員の採点個票を非開示にするなど初めから隠蔽姿勢が顕著だった。非常識な理由で契約書の業者名を黒塗りにしたことで、疑惑の闇が広がった格好だ。こうなると、市役所と一部業者が組んだ事実上の入札妨害が行われた可能性も否定できない。

一連の経過について、行政機関の実態に詳しい市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は、次のように話している。
「契約書の業者名を黒塗りにしたというケースは、聞いたことがない。あってはならないことだ。非開示理由に至っては、まったく理解できない。何のためのプロポーザルだったのか、議会でしっかりと議論すべきだろう。そもそも、“業務遂行能力がある”としてプロポーザルの提案書を出しているはずで、選定下位だったからといって“準備ができていない”という主張は成り立たない。準備も人繰りもちゃんとできるという前提でプロポーザルに参加した以上、田川市の非開示理由は著しく妥当性を欠くものだ」

 

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