鹿児島県指宿市の公立中学校で12日、勤務する特別支援教育支援員の女性に2年生の女子生徒が投げ倒され、頚椎捻挫など全治約2週間のけがを負っていたことが分かった。生徒は指宿署に診断書を提出、同署は生徒の右膝内側にできたあざの写真を撮るなどして事実を把握している。
保護者によると、学校が13日に経緯を説明するとして設けた場で、学校側から誠意を感じる謝罪はなかったどころか、支援員は「私が被害者」と語ったという。保護者は「謝ってもらえれば事を大きくする気持ちはなかったのに逆撫でされた」と憤る。学校側は15日、ハンターの取材に対し、保護者に了解を取るとして記者を帰した後、「事実を精査中で回答できない」と電話してきた。しかし、保護者に取材対応を確認する連絡はしていなかった。
◇ ◇ ◇
生徒や保護者によると、12日午後4時ごろ、支援員が保健室にいた生徒を訪ねた際、生徒が「しつこいから出ていけ」と支援員を押したことからもみ合いになり、支援員から足をかける形で倒されたという。生徒はその場にいた保健教諭から「頭を打たなくてよかった」などと声をかけられたと話す。生徒は翌13日に病院で治療を受け、右膝や左腕を打撲するなど全治約2週間の診断を受けた。
学校側が保護者に行った説明の場では、教頭と担任がもみ合った状況を演技で表現。向き合って生徒の両腕をつかんでいたが、生徒が足をバタバタして蹴られそうだったので足を取ったら倒れたなどと説明した。保健教諭はその場にいなかったと主張したという。保護者は「最初はこちらが勝手に転んだと言うなど、言うことが二転三転してちぐはぐ。足を手で取っただけなら、右膝の内側にどうやってあざができるのか」と語る。
生徒は中学では特別支援が必要な生徒として保健室で勉強していた。生徒は支援員にきつく当たられると感じており、そりが合わなかったという。今回の事件も、そうした関係の悪さが招いたとみられ、保健室では支援員の靴が見当たらなくなったことについての話になり、支援員は生徒に対し「靴を返して」と言われたと話している。
指宿市の教育行政をめぐっては、昨年9月、公立小学校に勤務する20代の女性教諭が、同僚の30代男性教諭に呼び出されて体を触られたり、腕を引っ張られるなどの暴力を受け、全治2週間の傷を負った事件で、発生から1か月以上経っても教育委員会や学校側から保護者らに対し説明がなかったことが分かっている。
小学校長名で教育委員会に提出された「事故報告書」は矮小化され性的暴行が「セクハラ」で済まされた上、本来なら懲戒免職にすべき男性教諭が「停職1カ月」となって退職金まで支給されるという理不尽な処分に終わっていた。今回の事件に学校や市教委がどう対応するのか注目だが、学校は記者に対し「保護者に取材に応じていいか確認する」と言いながら、実際には何も行っておらず、特別支援の必要な生徒がけがを負った事実を真摯に受け止めているとは思えない。