鹿児島市いじめ第三者委、初回調査で「重大事態」否定|ガイドライン無視

鹿児島市内の公立小・中学校で起きた3件の「いじめの重大事態」を学校側や鹿児島市教育委員会が隠蔽していた問題を巡り、市教委が設置した第三者委員会「いじめ問題等調査委員会」の委員長が、新たに検証対象となった4例目のいじめについて、保護者に「病院の診断書が出ても重大事態にはならない」などと、申し渡していたことが分かった。

第三者委員会として当該事案が重大事態にあたるのか否かの調査を行っている最中に、委員長が議論を省いて未確定の方針を主張した形。結論ありきで進んでいるとしか思えない市教委と第三者委員会の姿勢に、関係者の間から不信の声が上がっている。

◇  ◇  ◇

問題のいじめは、鹿児島市内の中学校で起きている、現在進行中の事例。今年8月に子供が受けているいじめについて訴えていた保護者に、市教委から「学校から重大事態の連絡があった。法とガイドラインにのっとり対応していく」との連絡があったことが分かり、ハンターが同月18日の配信記事で概要を報じていた。(参照記事⇒《鹿児島市公立中で4件目の「いじめ重大事態」|5件目も浮上》)

当該事案は市教委が設置した第三者委員会で調査することになり、10月30日に被害生徒と保護者への聞き取りが実施されたが、思いがけない委員長の発言は、その時に発せられていた。

いじめを受けた被害生徒が、精神的なダメージを受けたため医療機関で受診したことについてやり取りするなか、保護者が診断書が準備できていないことを説明していると、委員長がこれを遮る形でこう言ったという。

まあ、これから大学病院とかどこか受診したとして何かしらの診断は出るのでしょうが、いずれにしても重大事態にはなりません

聞いた保護者はあ然となり、言葉も出なかったと話す。
「いきなり重大事態ではないと言われ、ショックでした。言葉が出ませんでした。何のための調査なのか分からなくなりました。それなら、もう結構という感じになりますよね。11月11日に釈明の電話をもらいましたが、ハンターの記者の方が昼間、この件で市教委に事実確認に行かれたのを知っていましたから、『ああ、言い訳なんだな』と分かりました。市教委も第三者委員会も信用できないですね」

保護者がショックを受けた時点で、この第三者委員会は当事者としての資格を失ったといえる。「病院の診断書が出ても重大事態にはならない」と言い放った委員長の対応は、いじめ防止対策推進法が規定する「いじめの重大事態」に関する調査が適切に実施されるよう文部科学省が定めた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を無視する暴走。ガイドラインは、いじめが起きた場合の対応について、まず学校の設置者(この場合は、鹿児島市教育委員会)及び学校に対し、次のように求めているからだ。

○ 学校の設置者及び学校は、詳細な調査を行わなければ、事案の全容は分からないということを第一に認識し、軽々に「いじめはなかった」、「学校に責任はない」という判断をしないこと状況を把握できていない中で断片的な情報を発信すると、それが一人歩きしてしまうことに注意すること。また、被害者である児童生徒やその家庭に問題があったと発言するなど、被害児童生徒・保護者の心情を害することは厳に慎むこと。

さらに、重大事態の発生が認められて第三者委員会が設置された場合に被害児童生徒・保護者等に対する調査方針の説明などを行う際の注意点はこうだ。

「いじめはなかった」などと断定的に説明してはならないこと。

第三者委員会の委員長が「重大事態にはならない」という結論を述べた10月30日は、当該事案について初めて聞き取りが行われた日。つまり、いじめの実態を確認するという入り口の段階で、結論が決まっていたことになる。第三者委員会の委員長は、ガイドラインの趣旨とはまるで違う姿勢で被害者側に不信感を与え、精神的な二次被害を招いたことを猛省すべきだろう。

ハンターは今月11日、いじめの問題を所管する鹿児島市教育委員会青少年課を訪ね第三者委員会委員長の問題発言について事実確認を求めたが、同課からは今日に至るまで何の回答もない。鹿児島市教委や第三者委員会は、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が理解できていないか、あるいは初めからガイドラインを守るつもりがないかのどちらかだ。

 

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