正式起訴9人・略式25人|参院広島巨額買収事件で残るモヤモヤ感

2019年の参議院選挙広島県選挙区で2,900万円をばらまき逮捕・起訴され、有罪判決が確定した河井克行受刑者とその妻で元参院議員河井案里氏の事件が、波紋を広げ続けている。

2人から現金を受け取った被買収側の広島県議や市議については、検察が一度は不起訴と判断。しかし、検察審査会そのうち35人を「起訴相当」と議決したことで、再捜査にあたった東京地検特捜部は広島地検に事件を移送した。

体調不良の1人を除く34人のうち容疑事実を認めた25人が略式起訴、認めていない9人は正式な起訴。検審が「不起訴不当」と議決した他の46人は、再び不起訴となっている。巨額買収事件の捜査は終結したことになるが、関係者からは様々な声が聞こえてくる。

■現金授受認めながら「無罪」主張

「3月7日に、35人のうち30人近くに、広島地検から電話が入った。内容は略式起訴を受けるかどうかという打診だった。受けるなら、3月9日に広島地検まで来てくれとも言っていた」――河井夫妻から現金を受け取ったある広島市議が、そう語る。

これまで、被買収の多くの県議、市議が沈黙を守ってきた。だが、3月2日に起訴相当の議決を受けた広島市議の藤田博之氏、三宅正明氏、伊藤昭善氏、木山徳和氏、谷口修氏が記者会見。そこでの主張が、波紋を呼ぶことになった。

5人は共通の思いとして「年に2回位、現金を渡されることはこれまでも多くありました」「長年、少なくとも広島県広島市においては儀礼的な贈呈が行われていた」と説明。そして「どうして、克行氏が持参した現金を受領したのか?という問いには『それは普通のことだから』という答えになる。微塵の罪悪感もなかったのです」「克行氏から現金を手渡されたとしても不思議ではない」などと述べた。被買収の議員にとって、国会議員と地方議員の間で現金のやりとりが日常茶飯事であったと訴えたのだ。

さらに、「起訴相当」の議決を受けた公職選挙法違反事件については、「検察の捜査過程で、ほとんどの議員は自白調書に署名した。河井夫妻の刑事裁判でわざわざ東京地裁まで出掛けて(買収の)趣旨の証言までした。だが、買収のような認識は通常ない。捜査の目的は河井克行氏を捕まえることです。先生(地方議員)には議員をこのまま続けてもらいたい。我々は河井を捕まえたいだけ」と自白調書にサインした理由を話した。

だが、記者会見した5人はいずれも当選回数3回以上と政治経験が豊富。サインしているのが自白調書である以上、「検察からこう言われた」は言い訳にしか聞こえない。河井夫妻の裁判では買収の意図があったのかどうかが最大の争点だったのだ。自白調書は「買収されました」と同義になる。

河井夫妻は当初、買収ではなく、陣中見舞い、統一地方選の当選祝い、自民党の党勢拡大、地盤培養のためだと主張した。しかし、被買収側のある議員は「常に選挙のことが頭から離れません。河井克行氏から現金を渡された時、“選挙のことは頭に全く無かったのか”と聞かれれば、それはあった」として、河井夫妻から受領した現金に買収の意図、趣旨があったことを認めている。

「選挙と無関係ではない」と言いながら「無実」と主張する滑稽さ。5人は現金の受け取りを認めながら、争う姿勢を見せているというだから呆れる。会見で伊藤市議は「(現金のやりとりは)古い慣習のようなものがあり、選挙違反だとは思わなかった」と堂々と話した。起訴状によれば、藤田氏は克行氏から2019年3月に50万円、6月に20万円と合計70万円も受け取っている。

■残された課題

2人から3回に渡り合計200万円という現職地方議員では最高額をもらっていたのは、奥原信也県議(11日に辞職願提出)。その悪質さはすでに、ハンターでも報じている(⇒「参院広島対立二陣営から現金|注目集める「起訴相当」県議」)が、容疑を認めたということで略式起訴。割り切れない思いの関係者は少なくあるまい。

河井夫妻がばらまいた2,900万円の現金には、広島県独特の金まみれ選挙という背景があった。高額な現金を受け取りながら、広島地検は、大半を略式起訴で捜査を終わらせた。被買収の金銭授受の真相がハッキリしないままに終わってしまう可能性がある。ばらまく国会議員、受け取る地方議員だけではなく、国民目線で罰することのできない検察の姿勢にも大きな問題があるのではないだろうか。

検審の議決が公表された後に自主的に辞職を決めた地方議員は、たったの17人。残りの被買収議員たちは、居座るということか?

 

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