道警裏金告発・原田さん逝く|札幌「偲ぶ会」で有志ら追悼

2004年に全国で初めて実名で警察の裏金づくりを証言し、当時の北海道警察に組織的な不正経理を認めさせるなど警察改革に尽力した元道警幹部・原田宏二さんを偲ぶ会が5月28日午後、札幌市内で行なわれ、別れを惜しむ参列者たちが貴重な活動の意義を讃えた。原田さんは昨年12月に急逝していたが、遺族の意向でその公表が控えられていた。

◇   ◇   ◇

偲ぶ会は、原田さんの告発会見に立ち会った市川守弘弁護士(旭川弁護士会)らが主催。生前「葬式は出すな」「ひっそり死にたい」と言っていたという故人の思いを尊重し、親交のあった人たちなどに参列者を絞り込んで開催した。道警裏金問題を追及してきた報道関係者や、原田さんの立ち上げた市民団体のメンバーなど、約40人が足を運んで遺族とともにその功績を振り返った(下の写真)。

一連の裏金報道で菊池寛賞などを受けた元北海道新聞デスクの高田昌幸さん(62)は、ビデオメッセージで「原田さんはずっと取材陣を励ましてくれていた」と語り、稀有な人柄を「稀に見るピュアな正義漢」と評した。
「これまでいろいろな内部告発者と会ってきましたが、原田さんだけはどこか違っていました。だいたいは個人的な恨みが告発の動機になるものですが、原田さんからはそういうものを一切感じなかった。純粋に組織を立て直そうとした人でした」

同じくビデオでコメントを寄せたジャーナリストの大谷昭宏さん(76)は、原田さんの告発は警察への愛情に由来するものだったと話した。(*下の写真
「警察官一人一人をすごく愛していらした。その警察官をあらぬ方向に運んでしまう『組織』というものに、並々ならぬ怒りを持っておられたと思います。組織というものが暴走し出すとどれだけ恐いかということを、ご自身の体験から身に沁みてわかっていたんです」

函館市から足を運んだ元警察官の齋藤邦雄さん(74)は、原田さんの裏金告発を受けて新たな証言に名乗りを挙げた1人。「原田さんをバックアップしなければ一生後悔すると思った」と当時を振り返り、現職時代に趣味の自転車レースなどでともに過ごした時間を懐かしんだ。

市川弁護士や遺族によると、原田さんは昨年11月に体調不良を訴えて医療機関を受診、間質性肺炎と診断されて入院治療にあたっていたが、12月11日に容態が急変し、帰らぬ人となった。葬儀は近親者のみで済ませ、亡くなった事実は本年4月まで公表が控えられていた。

札幌在住の筆者はそれまで毎月1回の頻度で原田さんと杯をともにし、警察不祥事などの話題で元幹部としての意見を請うなどしていた。一昨年からはウイルス禍で交歓もままならなくなったが、原田さんからはその後も頻繁に連絡が届き、入院直前の昨年10月には忘年会の誘いを受けたところだった。11月下旬、請われて貸していた道警関連の資料が家族を通じて返却され、それから2週間と経ずに訃報が届いた。生前に触れた印象的な言葉に「警察官は正義を語るなかれ」という一句がある。法の執行者は法のみに従うべし、との諌言だ。なぜならば「正義は暴走する」――。自身は組織を敵に回してまで正義を貫きつつ、そういう客観的な視点を常に忘れない人だった。

原田宏二さんは1937年札幌生まれ。札幌南高校卒業後の1958年に道警入りし、初任地の札幌中央警察署で裏金づくりを知った。組織では裏金を捻出する側と受け取る側の両方を経験し、定年前の95年に57歳で退職。ノンキャリアで方面本部トップにまで上りつめ(釧路方面本部長)、最後の階級は上から3番目の「警視長」だった。退職後の2004年2月、北海道新聞の裏金報道を受けて告発会見を開き、組織的な不正経理を実名で証言。同3月には地元議会でも証言に立ち、全国で初めて警察の裏金づくりが公式に認められる成果を導いた。2007年、市民の立場で警察を監視する「市民の目フォーラム北海道」設立、代表(14年解散)。その後も警察を相手どる裁判の支援などを引き受け続け、晩年には首相演説ヤジ排除事件の国会賠償請求訴訟で原告の立証活動に力を貸していた。享年83。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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