町発注工事の入札結果を含む建設工事の関連文書を隠蔽するなど、独裁的手法の町政を続けている福岡県大任町の永原譲二町長の陣営に、公職選挙法が禁じる事前運動を行っていた疑いがあることが分かった。
■デタラメな政治資金処理
下は、永原氏の支援団体「永原じょうじ後援会」が福岡県選挙管理委員会に提出した令和3年分の政治資金収支報告書。ハンターが注目したのは、赤いアンダーラインで示した3件の支出である。
3月3日に、糸田町の印刷会社に対し58,000円の支払いを行っており、支出目的は「挨拶状 封筒 費」となっている。備考欄には「選挙の準備」とある。
3月23日と24日には、やはり「選挙の準備」のために新聞広告費を、それぞれ77,000円支払っている。
選挙に関する全ての収入と支出は、公職選挙法の規定に従って選挙運動費用収支報告書に記載することが義務づけられており、「選挙の準備」が事実なら、政治資金規正法が規定する政治資金収支報告書に記載するのは間違いだ。
念のため、永原氏が令和3年3月に行われた大任町長選挙の際に町選管に提出した選挙運動費用収支報告書を確認したところ、新聞広告や挨拶状についての記載はなかった。この段階で、永原陣営の選挙運動費用収支報告書と政治資金収支報告書の両方に、虚偽記載の疑いが生じる。
下の画像は、令和3年3月26日に、永原氏が読売新聞と西日本新聞の朝刊に掲載した「新聞広告」である。
同年の町長選挙は、3月23日告示、28日投開票の日程で実施されており、3月26日の新聞広告にかかった費用は「選挙運動」のための支出として処理されなければならない。しかし、当該支出は永原じょうじ後援会の資金で賄われており、そうなると政治資金収支報告書も選挙運動費用収支報告書も、資金処理の実態を正確に記載していないことになる。つまりは、「違法」ということだ。
■告示前、「選挙準備」の挨拶状
次に、政治資金収支報告書に記載しながら『選挙準備』として支出された「挨拶状」だが、ハンターは独自ルートで現物を入手している。
町長選の日程を明示した上で、事務所開きや出陣式に言及。さらに、これらの行事を「後援会役員のみで執り行うことと致しました」としていることから、この文書は明らかに選挙戦の告知だ。それを、「選挙準備」として後援会の資金で印刷し、後援会の封筒に入れて郵送していた。事前運動を疑うべき状況であることは確かだろう。
政治資金収支報告書の記載に間違いがないか確認するため報告書に記されていた連絡先に電話したところ、応対したのは永原氏の娘婿で、ファミリー企業の代表を務めている男性。政治資金収支報告書に記載された3件の「選挙準備」について“間違いではないか”と質したが、「そう書いてあるなら間違いではないでしょうが、今すぐには答えられない。帰って確認して連絡します」と話したきり、その後の連絡はなかった。
暴力団幹部から息子が買った大分県内の別荘で、「賭け麻雀」という犯罪行為を常習的に行っていた永原氏は、自身が指定暴力団の企業舎弟であったにもかかわらず、「ヤクザが業者を脅すから、入札情報を開示しない」と屁理屈をこね、ダミー会社を使った建設業支配の実態を隠蔽してきた。
その永原氏は14日、大任町役場で会見を開き、地元の指定暴力団「太州会」の幹部が逮捕されたことで「状況が改善した」という訳の分からない理由で、入札情報を開示すると言い出した。ただし、業者の賛同を得てからという非常識な条件を付けた上で、情報公開に応じるかどうかも「検討する」――。一体何のための会見なのか、取材した記者団から失笑が漏れていたというから、とんだ茶番と言うしかない。
ちなみに、逮捕された太州会幹部から脅されたという建設会社の代表は、永原町長の側近ナンバーワン。大分県内にある永原ファミリーの別荘で、一緒に賭け麻雀を楽しんでいた人物である。