田川市担当部長、永原大任町長の「圧力」認める|ごみ処理施設巡る情報公開問題で

 福岡県田川市を含む8市町村が整備を進めるごみ処理施設建設事業の概要について、組合長を務める永原譲二大任町長が一方的に自説を主張した今年7月14日の田川市議会全員協議会で、同事業の情報公開を巡るトラブルについて答弁を行った担当部長が、ハンターの取材に発言の真意を語り、永原氏から市長及び市への「圧力」があったことを認めた。

 ◇   ◇   ◇

 7月に開かれた田川市議会の全員協議会は、永原氏の独壇場。 ごみ処理施設建設事業の不透明な実態を指摘されてきたことに対し、8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」の議会を通じて「説明は尽くしてきた」と強弁し、正確な算出根拠が示されていない数字を並べて、「大任町が事業費を大幅に減額させた」などと一方的な主張を展開していた。

 この中で永原氏に同調する姿勢を見せていた陸田孝則市議会議長が、ごみ処理問題の担当であることを理由に全員協議会に呼んでいた勢島伴睦市民生活部長(当時)と池口芳幸環境政策課長(当時)に、「大変前後して申し訳ないんですけど、お二人の場合は、田川市及び東部環境衛生施設組合の執行部の構成員でございます。よって、質疑応答内容については、利益相反として、艱難辛苦苦しい立場ということになる可能性もあります。しかし、今後の田川地域発展の基礎づくりとして、10年、20年後にもですね、何ら恥じることなく真正面からしっかりと向き合い、躊躇なく公平・公正さを、更に信義を貫くという思いで、発言をお願いしたいと、このように思うところでございます。よろしくお願い申し上げておきます」と、田川市長や市にとって不利になるような答弁を誘導したとしか思えない発言。これを受けた形で尾﨑行人市議が、次のように質問していた。

 「永原譲二町長が村上卓哉市長に対して、田川市が保管する公文書を開示しないように要求し、応じなければ本市とは今後一切連携しないとした上で、建設中のごみ処理施設から出ていき、自分達で建てろ。ごみ処理は受け付けないなどと発言していたことが報じられたとあります。これは刑事告発するということで、司法の場に委ねられるのでしょうけども、ここに当事者がいらっしゃいますので、是非、事実をお伺いしたいと思いますので、よろしいでしょうか。そこにいた当事者だけでなく、市の職員も同席していたと思います。先ず市の職員にそのようなことが事実、あったのかお伺いしたいと思います」

 尾﨑氏の質問は、ごみ処理施設建設事業の内容や経過についてではなく、永原譲二大任町長が、ごみ処理施設の情報公開を巡る問題で村上卓哉田川市長に強要・脅迫行為を行ったのか否かを確認するもの。陸田議長の「利益相反」「艱難辛苦」「苦しい立場」という言葉の意味につながる“永原派”の連係プレーだった。明らかに場違いな質問に対する二人の役人の答弁は、こうだ。

勢島部長:今の質問でございますけども、要するに西日本新聞等に掲載された記事の内容ということで、よろしいですか。新聞に書かれた記事そのものというよりも、信頼性が無くなるので、というようなことは、話はしておりました。実際にそこが強要ないしは、また圧力はあったかというようなことでございましたら、それに関しては人それぞれの思いが、感じ方があろうと思います。私の方としては、そこまではなかったというふうにニュースの記事にも書かれておりますけども、そういった発言をさせていただきました。

池口課長:私もその場の担当課長として、同席をしておりました。先ず首長同士の会談ですので、会談の内容については、人それぞれ取り方があると思っております。内容については、圧力とか脅しとかいうのは、私としては感じてないというふうに思っております。

 部長と課長の発言は、田川市議会の全員協議会をはじめ、あらゆる場面で「圧力はかけていない」と強がる永原町長の主張に沿ったものとも聞こえる。しかし、田川市が公開した録音データを聞いてみると、永原氏が繰り返し発した「(文書を)出すのなら、田川市長名に作り替えた文書を出せ」は明らかに強要。首を縦に振らない村上市長に対する「いやなら(田川郡東部環境衛生施設組合の)議会から出ていけばいい。自分たちで(ごみ処理施設を)建てりゃいい」、「あんた方には協力せん」、「こんなことしとったら、あんた、4年間もたんよ」は、田川市民の暮らしに直結するごみ処理を盾にした脅迫に他ならない。

 子供が聞いても「脅してる」としか思わないであろう永原氏の言動を、田川市民を守る立場の市職員が擁護したのか――?ハンターは答弁の正確な意味を確認するため、現在は異動でごみ処理担当を外れた当事者の勢島伴睦部長に取材した。

Q:発言の真意を知りたい。部長は、6月23日の田川市役所における一連の永原発言を、本当に“圧力”はなかったと思っているのですか?
部長:どうも誤解を生んだようで、改めて自分の発言についてご説明しておきます。

Q:誤解というと?
部長:たしか、あの時は議長が利益相反とか苦しい立場がどうのとかおっしゃって、それを受ける格好で尾崎議員さんが質問されたと記憶してますが、私はごみ処理施設の工事費とか、これまでの経過について聞かれるものだとばかり思っていました。

Q:で、誤解というのは?
部長:はい。そこでいきなり『圧力はあったのか』と聞かれましたんで、てっきり私に対する圧力について有無を確認しておられるものと思ったんです。町長は、私に高圧的な態度を示したわけではなかったものですから。

Q:部長に対する圧力はなかった、ということですか?
部長:そうです。録音データを聞かれたら、私たち職員に何か圧がかかった場面はなかったと思います。

Q:では改めて聞きますが、村上市長や田川市に対する圧力は、あったんですか、なかったんですか?
部長:そういう聞き方をされると、明確に「あった」と申し上げておきます。ごみ処理という市民生活にとって重要な課題を、盾にとられたわけですから。

Q:強要があったと?
部長:市長に対しては、そういうことになります。全協(全員協議会)で『私として』か『私としては』と言ったと思うんですが、言葉足らずだったと、あとで反省しました。

Q:「圧力」を認められるということで、いいですか?
部長:けっこうです。

Q:初めに聞くべきだったかもしれませんが、そもそも、部長と課長は、なぜ議員だけの協議の場である全員協議会に出席して、質疑を交わすようなことをされたんですか?全協の設置根拠となる地方自治法の条文には「議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる」とあります。圧力があったかなかったかについて、役人を呼んで質疑する場ではないでしょう。
部長:確かにご指摘の通りかもしれません。当初、市長からも「出席しなくていい」との指示を受けていたんですが、議会側からの要請でしたので、断れないと判断したということです。ただ、先ほども言いました通り、永原町長がごみ処理施設について説明するということでしたし、まさかそこで「圧力」についてのご質問を受けるとは考えていなかったというのが正直なところです。ずいぶん議論が本筋からズレたと感じてましたから。

Q:ごみ処理施設についての説明という趣旨から外れた、話が逸れてると感じたんですね?
部長:おっしゃる通りです。

Q:最後にもう一度確認します。6月23日の永原町長による一連の発言は、“田川市長に対する圧力だった”、ということでよろしいですね?
部長:はい。その通りです。

 強要未遂があったとして田川市長と7人の田川市議から、それぞれ告訴、告発された永原氏は、「圧力はなかった」と強弁し、「白黒をつける」として反訴した。虚偽告訴および名誉棄損との主張らしいが、録音データという確実な証拠がある以上、「虚偽」だというのはかなり無理筋の話だろう。市長との会談に同席した二人のごみ処理施設担当職員が「圧力」と明言しなかったことに依拠しての反論なら、これも部長が「圧力だった」と認めたことで破綻確定となった。

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