「ジョウジから300万」で襲撃命令|元組員に「刺すか斬るだけでいい」|大任町議長銃撃事件の裏

 「ジョウジから」――そう言って指定暴力団「太州会」の二次団体「政時組」(解散)の組長(以下「O」。破門)がテーブルの上に置いたのは、帯封が付いた三つの現金の束。300万円だった。

 2002年(平成14年)に起きた福岡県大任町議会の楠木重明議長(当時)銃撃事件には、実際の犯人の他に別の襲撃部隊の存在があった。襲撃の指揮を執っていたのは「政時組」の当時の組長O。Oは、企業舎弟だった銃撃犯とは別に自分の子分である組員にも襲撃を命じ、失敗がないよう保険をかけていた。

 軍資金を出して襲撃を依頼したとみられるのは「ジョウジ」――現在の大任町長・永原譲二氏である。Oから襲撃を命じられていた元組員A氏の証言が続く。

■日本刀とバットで襲撃計画

Q:太州会の企業舎弟だった永原氏と楠木議長の対立があって、永原氏が狙われかねない状況だった。そこで永原氏が反撃に出たと――。邪魔な楠木議長を、黙らせようとしたわけですね。
A氏:そうですね。

Q:襲撃の指示を受けたのはいつ頃ですか?
A氏:2002年の春頃です。

Q:具体的には、どこで、どのように指示されたのですか?
A氏:事務所兼自宅やったです、Oの。1対1で。

Q:組長とあなたと二人だけで?
A氏:そうです。「楠木やってくれんか」と。

Q:殺せ、ということですか?
A氏:いやあ、私が『タマ取るんですか?』と聞いたらですね、Oは「いや、刺すか斬るだけでいい」って。

Q:殺さず、傷つけろということですか?いわば、警告というか、脅しというか。
A氏:まあ、そういうことです。で、『道具はどうするんですか?』と聞いたら、「切れ物でいい」と言ったですね。

Q:切れ物?刃物ですかね?
A氏:日本刀でした。短い。脇差程度の長さの。

Q:で?
A氏:『誰からの頼みですか?』と聞いたらですね、「分かろうが」ち笑いながら、「ジョウジ」からと言ってテーブルに現金置いたですよ。帯封のついた。

Q:いくらあったんですか?
A氏:300万。活動費ですたい。

Q:Oさんは「ジョウジから」とハッキリ言ったんですね?
A氏:はあ、いつものことですたい。「ジョウジから車買ってもろた」と同じ感覚ですよ。チャカのカネまで出してもろとったくらいですけん。

Q:議長銃撃事件で使われたトカレフですか?
A氏:いやいや、まったく別。組織内で“道具いらんか”という話が来て、トカレフじゃなくてマカロフでしたね、ソ連製の。4丁。それをOが買った。カネ出したのが永原。「ジョウジが(カネ)出したんぞ」って自慢してましたから。

Q:永原氏が拳銃を買うカネまで出していた?
A氏:はい。Oは「ジョウジに見せないかん」と言って、チャカ持って永原のところに行きましたから。実際に買ったかどうか確かめるため、永原が“見せろ”言うたんでしょうね。Oはそう説明しとりましたから。

Q:襲撃用の日本刀はどこにあったものなんですか?それも永原氏のカネで調達したとか?
A氏:日本刀は普通にありましたもん。買ったとかじゃないです。自分たちで持っとったですから。

Q:具体的な襲撃計画はどのようなものだったんでしょうか?
A氏:単純なもんですよ。議長の女のマンションで待ち伏せして襲えというわけで。小倉南区のマンションの駐車場で。まず、バットで殴って、それから脇差で、という段取り。

Q:え、一人でバットと脇差ですか。
A氏:いえ、私と別の組員らと、複数で。

Q:なるほど。ところで、マンションの場所はどうやって知ったんですか?
A氏:Oが「ここに行け」と――。

Q:組長の指示だった?
A氏:そうです。

Q:そこで議長が現れるのを待ったわけですね。
A氏:はい。1か月以上、駐車場で張り込んだです。

Q:議長は来たんですか?
A氏:いや、来ませんでした。そのうちに、“飯塚のオートレース場で楠木が撃たれた”となって。終わりですよ。頭にきましたね。

Q:というと?
A氏:私らは組長に言われて楠木を狙ったんですよ。それも長期間。他に(襲撃を)頼んじょるなんて、一切聞いてなかったですから。しかも、銃撃したのは企業舎弟、つまり堅気のようなもん。俺らのメンツはどうなるんやと……。Oに、“どういうことか”と問い詰めたですよ。

Q:O組長から説明はありましたか?
A氏:しどろもどろで、失敗するわけにはいかんとか、なんとか――。そんで、『手りゅう弾出せ!』と怒鳴ったんです。

Q:手りゅう弾?そんなものまで用意していたんですか?
A氏:いや、Oが持っちょるの、知っとったんで。で、それ出せと。

Q:あったんですか、手りゅう弾が?
A氏:「そんなもん、どうするんか」ってOが言うんで、『楠木の家に放り込んできちゃるけ』と――。そしたらOが慌てて、「そんなことせんでいい」ってね。

Q:それで終わったんですか?
A氏:なんがですか。こっちは収まらん。『カネはどうすんか』って言いましたよ。300万ですね。そしたら、「カネは返さんでいい」ですよ。あたり前やろうって話ですよね。

Q:話を戻しますが、小倉のマンションに議長が来なかったというのは、なにか計画に齟齬があったとか、むこうが警戒したとか……。
A氏:それがですね、お粗末な話で。ガセだったんですよ、マンションの住所自体が。Oの間違い。あとで分かった。来るわけがない(笑)。

Q:そんなこと、あるんですね。
A氏:自分たちがやっとったら、いま、こうしてお話ししてないでしょうね。世の中、分からんもんです。

Q:永原町長に、言いたいことはありますか?
A氏:町長になって、住民の税金を食うようなマネばかりしてきた。ヤクザよりタチが悪い。あんたも太州会の企業舎弟として名を成したんじゃけん、往生際だけは悪くしたらいかんよ、と。

 ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆

*「ジョウジ」とは、現在の大任町長・永原譲二氏のこと。永原氏は、出所した実際の銃撃犯に千万単位の現金を渡していたことも分かっている。

【参照記事】
大任町議長銃撃事件の真相(上)|指示した組長が漏らした「永原譲二」「1000万円」
大任町議長銃撃事件の真相(中)|出所直後、永原町長から1400万円
大任町議長銃撃事件の真相(下)|黒幕判明で明らかになる「動機」

 

 

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