福岡県大任町に虚偽公文書作成の疑い|「入札結果表」にあり得ない記載

公共事業の情報を隠蔽するなど恣意的な町政運営で数々の問題を抱える福岡県大任町(永原譲二町長)が開示した「入札結果表」の一部に、実態と違うものや現実にはあり得ない入札結果が記載されていることが分かった。虚偽公文書作成の疑いがある。

問題が見つかった入札結果表は平成29年から令和3年6月までのもの。ハンターが「入札結果表」の不開示処分を取り消すよう求めた裁判で、事実上の負けとなった同町が昨年12月、改めて開示に応じていた。

■これまでの経緯

入札結果非公表を国土交通省や総務省から「入札契約適正化法違反」と指摘され、改善指導を受けても方針を変えようとしなかった福岡県大任町の永原譲二町長が、昨年3月14日に会見を開き、4月1日から公表を再開すると発表した。この折の町長の発言要旨は次の通りだ。

・今年4月からの入札結果を公表する。公表文書は役場玄関口にある掲示板に貼り出す。

・2021年7月から今年3月までの入札情報を公開するが、関係する16の業者に「開示・非開示」の是非を確認してからということになる。

・それ以前の入札結果については役場玄関口にあるの掲示板に貼り出していたため、違法性は問われていない。開示請求があれば検討する。

永原氏が何としても隠したかったのは、ハンターが同町に開示請求して不開示決定が出される以前――つまり2021年6月までに執行された町発注工事の情報。この事案の隠蔽に走った理由は、施工能力のない「ぺーパー業者」に工事を受注させ、自身の周辺企業にうまみを享受させるという実態を隠したかったからだと考えられていた。その証拠に、公表再開後も事実上の非公開を貫くため、役場の担当窓口に下の画像にある『閲覧についての注意事項』を設置、「転載再止」「情報を漏らすな」で閲覧申請者を牽制していた。

■「入札結果表」に生じた疑義

ハンターが大任町に対し入札結果表の開示請求を行ったのは令和3年6月14日。町は、同年6月25日付けで非開示にすることを決定する。この決定を受けてハンターは、同年7月1日付けで非開示処分について、公共工事の入札情報を公表するよう義務付けた『公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律』の規定に違反するものとして取り消しを求めて審査請求。1年半以上放置された後、請求が却下されたため福岡地方裁判所に非開示処分の取り消しを求めて提訴していた。

裁判の結果、大任町が出した結論は下の「準備書面2」(*赤い囲みはハンター編集部)にあるとおり、『不開示決定の撤回』だった。

大任町の不開示処分撤回を受け、平成29年度から令和3年6月までの入札結果表の写しを交付するよう求めたところ、問題となった入札結果表 計372件分の写しが送られてきた。しかし、内容を精査するうち、開示された入札結果表に他の自治体の入札結果表では考えられない記載が多数あることが判明。文書の信頼性に疑念が生じる事態となっている。

下は、「問題あり」として、ハンターの編集部が疑問点を赤い字で記入した5枚の入札結果表である。

上掲の4枚は、いずれも町役場入り口の掲示板に貼り出されていたはずのもの。間違った入札結果を公表していたとすれば、町民に嘘を周知していたことになる。杜撰を通り越して“デタラメ”ということだ。永原町長は、入札結果を見た反社が業者を脅したと公言してきたが、こんな文書をもとに圧力をかけていれば、とうに事件化されていたはずだ。文書の信頼性が揺らぐのは当然だが、「偽造」もしくは「虚偽」と断定せざるを得ない入札結果表も存在していた。それが下の1枚である。

 一目瞭然。記載された工期(平成30年5月9日から平成30年10月19日)、及び計算上の税額「8%」から、消費税が10%にアップする前の契約だったことは明らか。確かに、この工事は平成30年に発注されたものだ。しかし、入札実施日は「令和4年1月12日」になっている。「令和」という元号を当時の菅義偉官房長官が発表したのは、平成31年(2019年)4月1日。絶対にあり得ない入札結果が、いったんは町の掲示板に貼り出され、今回公文書として開示されたことになる。

見過ごすことのできない事実は、他にもあった。これもあり得ないことだが、開示された入札結果表の「入札年月日」と「工期」の始期はすべて同一日。落札したその日から工事を行うという、常識外れの建設行政が行われていることになる。さらに、他の自治体の入札結果表には必ずと言ってよいほど記載のある「入札予定価格」がなく、即座に落札率の計算ができない格好となっていた。総合すると、『虚偽公文書作成』が強く疑われる状況だ。永原町長は、どう説明するのだろう。

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