ヤジ訴訟判決「知事は重く受け止めるべき」| 元国賠原告らが北海道に申し入れ

8月の最高裁判所決定により一審原告らの「一部勝訴」が確定した「首相演説ヤジ排除事件」国家賠償請求裁判の判決について、実質全面勝訴した札幌市の女性が9日、裁判の相手方だった北海道の各機関に要請書を提出し、謝罪や関係者の処分などを求めた。要請後に記者会見した元原告の女性は「敗けたから慰藉料を払って終わり、ではなく、しっかりとした検証や処分が必要」と改めて訴えた。

◇   ◇   ◇

道知事などへの要請書を提出したのは、2019年7月に札幌を訪れた安倍晋三総理大臣(当時)に「増税反対」などとヤジを飛ばして警察官らに排除され、これを表現の自由侵害として地元警察に賠償を求める裁判を起こした札幌市の桃井希生さん(29)。裁判では、同じ趣旨で一審原告となった同市の大杉雅栄さん(36)とともに一審・札幌地裁で全面勝訴判決を勝ち取り、二審・札幌高裁でも大杉さんが逆転敗訴した一方で桃井さんは勝訴を維持、本年8月の最高裁決定で同判決が確定した。

決定により、当時の警察の対応が違法・違憲だったことが認められたものの、敗訴した道から謝罪などのはたらきかけはまったくないという。9日の要請では道知事などに対し、今回の決定をふまえた謝罪や再発防止、関係者の処分などを求める申し入れを行なった。要請書の提出先は知事部局と警察本部、及び警察を監督する公安委員会の3機関で、とりわけ公安委については適切な監督責任を果たせていなかったとして警察法79条で定める「苦情申出」の形をとった。

要請後に記者会見した桃井さんは、各機関の責任について次のように述べている。

「まず知事は、こういう判決が出たことを重く受け止めるべきだと思います。表現の自由が奪われたことを司法が認めたわけですから。警察や公安委員会についても、5年間にわたる裁判で『違憲』『違法』という判決になったのに、それを受けて処分とか再発防止策とか何もしないんだったら、本当に司法が軽視されていることになる。『裁判に敗けました。慰藉料払いました。はい終わり』で済むわけないと思います。二度とこんなことが起こらないようにちゃんと検証すべきですし、排除に関わった警察官、その時の責任者の本部長も含めて、処分をすべきだと思います」

各機関の長に宛てた要請書を受け取ったのは、道警本部長要請は道警総務部の職員2人、公安委員長要請は同じく総務部の別の職員1人、知事要請は道文書課の職員1人で、いずれの手交後も回答などは得られなかったという。知事への要請時には報道各社の立ち会いが認められた一方、警察の庁舎内で行なわれた警察本部長・公安委員長への要請の場では取材が認められなかった。いずれの対応も知事や本部長自身ではなく職員が代行した形だが、要請を打診した当初は各機関とも職員面会にさえ後ろ向きで、知事部局は郵送での要請書提出を求めてきたという。こうした対応に、桃井さんは次のように疑問を呈した。

「道知事としての責任をとる場でもあるので、出てきて欲しかった。鈴木知事はただ知事であるだけじゃなく、ヤジ排除の場にいた人です。安倍首相の横で選挙演説を聴いていた人なので、当事者といっても過言ではない。今は議会対応とかで忙しいのかもしれないけど、では『いつならOK』というのがあってもよかったのに、と思います」

各機関への要望は、前述の公安委への苦情申出を除いては道側に回答の義務がなく、真っ当な対応がなされるかどうか定かでない。公安委要望については、警察法に基づく対応で苦情処理の結果が文書通知される可能性がある。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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