【自民党総裁選】「改革」叫ぶ小泉氏を支援するブラック議員たち

9月6日、小泉進次郎元環境相が自民党総裁選に立候補することを表明した。小林鷹之前経済安全保障担当相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相、林芳正官房長官、茂木敏充幹事長が先行して出馬表明。9日に高市早苗経済安全保障担当相が、10日には加藤勝信元官房長官も出馬することを表明して総裁候補が乱立する状況だ。

このうち、小泉氏が注目されることについて「最も総裁の座に近い候補だからですよ」と話すのは総裁選で同氏に投票するという自民党のある議員。「メディア対策も万全ですよ」と自慢げだ。

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小泉氏の記者会見はPR会社が仕切り、出席には事前登録が必要だった。出席した記者によれば「QRコードでチェックを受け、座席まで決められ、用意周到という感じでした」と感想を話す。

「新時代の幕を開ける」と述る小泉氏。「総理大臣になれば、1年以内に政治改革をやる」「解散総選挙で信を問う」と訴え、早くも総理になったかのような物言いだ。

小泉氏の後に、確実に総裁選出馬会見を予定しているのは、高市早苗経済安全保障担当相のみ。上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、斎藤健経産相は、推薦人20人が集まるかどうかギリギリのところだという。

総裁選は1回目の投票で小泉氏がトップに躍り出ることが確実視される状況だ。だが、10人ほどが乱立する総裁選では、小泉氏といえども1回目で過半数の票を積み上げるのは、厳しいとみられている。

2位には、石破氏、高市氏、小林氏のいずれかが有力視され、決選投票になる見込みとなっている。前出の小泉シンパは、「本当は1回目で勝ちたいが難しいだろう。小泉さんは、発言や行動の一つひとつに注目が集まる候補者。裏金議員や政治とカネへの対応、世襲の問題などで、ちょっとでも口を滑らすだけで支持が急降下しかねない」と陣営を引き締める構えだ。

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そんな小泉氏が抱える“火種”の一つが、推薦人や彼を支持する議員だという。小泉陣営の選対は、トップの菅義偉元首相が牛耳り、そのグループ「ガネーシャの会」のメンバーが多く名前を連ねる。実務は、岸田派の小林史明衆議院議員と村井英樹官房副長官に委ねられているが、その裏で暗躍しているのが、“スネにキズ”ある議員たちだ。

菅氏と近く、二階派から推薦人を大量に集めているとされるのが武田良太元総務相。その子分である宮内秀樹衆議院議員、鳩山二郎衆議院議員、鷲尾英一郎衆議院議員らが小泉支援で動いているという。

二階派はすでに、二階俊博元幹事長が政界引退を決めており、草刈り場になりかねない状況。「二階先生は総裁選にはあまり口出ししていない。ただ、主流派になれるようにという指示だけはしているそうです。武田さんはもとも菅さんと昵懇の仲。小泉陣営の中核は、菅―武田のラインと言っていいでしょう」(旧・二階派の議員)

しかし、武田氏は自民党の裏金事件で1,926万円の不記載が判明。今年4月に「役職停止1年」の処分を受けている。国会の政治倫理審査会に呼ばれ、弁明を余儀なくされたことは記憶に新しい。

宮内氏も裏金議員だが、公共事業を巡ってきな臭い噂が絶えない議員だ。2020年に発覚した中央自動車道耐震補強工事における強度不足問題を巡っては、NEXCO中日本が発注した工事を受注したO社と宮内氏の癒着が、週刊文春で大きく報じられた。当時、農水副大臣だった宮内氏はO社が「支援者」であるこことを国会答弁で認めたが、献金やパーティー券などの付き合いは否定している。

ハンターで指摘しているように、鳩山氏の政党支部は、暴力団親交者の会社から政治資金を得ていたことが判明(既報)。さらに、2021年の衆議院選挙では旧統一教会が鳩山氏の支援を行い、旧統一教会の久留米家庭教会の幹部が「福岡6区ですね、鳩山二郎先生はですね、見事に12万5,366票を獲得いたしまして勝利しました」、「いったん締めくくりとして、ここに鳩山二郎先生を迎えて、勝利の報告をしてもらう(中略)皆さん歓迎してください」と述べていたことが分かっている。鳩山氏が当選御礼のために久留米家庭教会にやって来ることを予告してたわけで、旧統一教会と鳩山氏の深い関係を物語るエピソードだ(既報2

小泉陣営の選対には、安倍派の裏金議員・佐々木紀衆議院議員や、飛行機に搭乗した際のパワハラを歌手の吉幾三さんに告発され、大炎上した長谷川岳参議院議員の名前もある。

「長谷川さんは選対では各種団体の担当になっています。要は、都道府県連の団体に挨拶に出向いたり、電話で小泉氏に1票をお願いする役割です。だけど、パワハラの長谷川が電話をするだけでマイナスですよね。誰が長谷川を引っ張り込んだのか……。マスコミやネッ上での攻撃材料にならなければいいが」(前出の自民党議員)

また、小泉氏支援の大串正樹衆議院議員は、2021年の衆議院選挙で旧統一教会と「政策協定」を締結し、書面にサインをしていた。霊感商法が社会的問題となっている、旧統一教会。大串氏は消費者担当の副大臣を務めたこともある。

2022年10月26日の朝日新聞電子版によれば、大串氏は《支援者の1人に友好団体の関係者がおり、「国政報告会を開いてほしい」と依頼され、「選挙前であるので、私が出向いた」。その際、「『推薦書を交付します。つきましてはこれにサインをしてほしい』とその場で言われた」という。突然のことだったが、用紙をその場で見て署名した》旧統一教会にまで出向いてサインというのは、よほど親しい関係だと思われる。また、小林氏も旧統一教会の幹部とのツーショット写真が流出し、多大な支援を受けていたとみられている。

小泉氏自身に問題がなくとも、支援する議員がブラックばかりだと陣営全体の評価が下がるのは必定。小泉氏の「爆弾」は、足元の支援議員にあるのかもしれない。もっとも、裏金議員が80人以上もいる自民党の総裁選だけに、きれいな戦いを望む方が無理な話なのかもしれない。

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