旧統一教会への解散命令で注目される自民党の対応

3月25日、東京地裁は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に宗教法人法に基づく解散命令の決定を下した。

霊感商法などで高額な壺、多宝塔、宝石などを献金と称して売りつけ200億円を超す膨大な被害が出たことについて決定書は、《類例のない膨大な規模の被害を生じさせた。不法行為に該当する献金勧誘などの行為の態様は総じて悪質》《総体として「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」にあたる》などと指摘。一連の行為が宗教法人法第81条第1項第1号の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」であるとして、これを民法上の不法行為に該当すると認定した。

旧統一教会は、「誤った法解釈に基づいて出されたもの」として即時抗告したが、解散命令の決定を聞いて同団体と関係が深かった自民党の議員たちは複雑な心境のようだ。

◆   ◆   ◆

これまで、宗教法人への解散命令はオウム真理教など2つの事例のみ。いずれも宗教法人のトップなどが、刑事事件に関与したことが理由となっていた。今回は、民法の不法行為でも宗教法人の解散命令につながることを認めた形だ。

旧統一教会の霊感商法については1990年代から問題視されていた。刑事事件で有罪判決が下されたり、民事訴訟で賠償が認められるケースはあったが、解散命令にまでは至らなかった。

一時は忘れられつつあった旧統一教会の“悪行”が再び注目を浴びることになったきっかけは、2022年7月に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件。犯人の山上徹也被告が「母親が旧統一教会にのめり込み、多額の献金を巻き上げられ、一家がめちゃくちゃになった」と犯行動機を語ったことで世論が喚起された。

安倍元首相は旧統一教会の関連団体にビデオメッセージを送つたり、安倍派の議員に対する選挙支援を求めるなど深い関係にあったことが、銃撃事件につながったとみられている。

旧統一教会の問題を長く手がけてきた弁護士は、同団体の不法行為が長く放置された理由の一つに自民党との親密な関係をあげる。

「選挙があるたびに、自民党に人と票で支援してきたのが旧統一教会。国家公安委員長にまでなった山谷えり子参議院議員はハンターの記事でもわかるように、旧統一教会の信者に多大な支援を受けていたことが分かっている。政治家と統一教会の持ちつ持たれつが、不法行為を見逃す状況を作り出してきた」(*参照記事

霊感商法については、こうも話す。

「ハンターが報じた詐欺の指南書についての記事(*既報)は、旧統一教会が詳細なマニュアルを作成し、信仰心に付け込んでデタラメな商品を売りつけていたことを明らかにした。旧統一教会は、『コンプライアンス宣言以降は(霊感商法などの)被害は激減』と解散命令に反論しているが、『激減』ということなら、現在も霊感商法は続いており被害者が少なからずいるということに他ならない。霊感商法を認めたも同然だ」

10年ほど前に脱会した元信者は、呆れ顔で次のように語る。

「今も高額献金を要求され財産をむしりとられようとしている人がいます。『コンプライアンス宣言って何ですか?』と知らないふりをして、献金の勧誘をしている信者がまだ現実にいるんです。自民党も懲りていない。これほど問題になったのに、去年の衆議院選挙では私に『ご支援を』と連絡してきた候補者もいます。旧統一教会関係者の名簿から連絡してきていることが明らかなものでした」

連絡してきたのは、昨年の衆議院選挙に出馬していた自民党の公認候補X氏からだったという。X氏は落選したが、旧統一教会が昔のように同氏を応援していれば、復活当選していた可能性もあるほどの票差だった。

「X氏からの連絡で街頭演説などに行った信者、元信者もいました。宗教法人格がなくなることなんて、ずっと前から想定していること。コンプライアンス宣言の後は、日本にカネを置いておくと何かの時に差押えられると、信者を渡航させてはせっせとカネを運んでいた。旧統一教会の内部情報では『自民党がそのうち助けてくれる』と幹部が触れて回っているそうです」(前述の元信者)

自民党のある参議院議員は、「これまで、議員によって濃淡があるが、旧統一教会の支援があったのは事実。それを急にやめろといってもなくなるわけがない。応援していますと声をかけられれば握手もするし、写真も撮る。それが集票につながるのですから」と本音を漏らす。

2022年9月に実施された自民党の調査によれば、旧統一教会と関係があったのは179人。これを地方議員まで含めると、膨大な数になるはずだ。自民党がキッパリと手を切ることが、旧統一教会の滅亡には一番の近道なのかもしれない。

 

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