先行き暗い自民党大阪府連

「覚悟はしていたが、現実になるとはね……」と観念したかのような口調で話すのは自民党の大阪府議。定数4の参議院大阪選挙区で自民党は議席を確保できず、まさに“大敗”の象徴となった。複数区で、自民党が議席をとれなかったのは大阪選挙区だけだ。

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大阪選挙区ではともに新人の佐々木理江氏が1位、岡崎太氏が2位と日本維新の会が上位を独占。3位には、躍進した参政党の宮出千慧氏、4位に公明党の現職・杉久武氏が滑り込んだ。自民党の柳本顕元衆議院議員は5位に沈んでいる。

自民党が大阪選挙区で議席を確保できなかったのは1998年以来27年ぶりのことだ。当初、元大阪府知事の太田房江氏が3期目を目指していたが、ハンターでも既報のように「政治とカネ」のスキャンダルが発覚し、太田氏自ら「政界引退」を発表。自民党は急きょ、公募を余儀なくされた。

選ばれたのが衆議院議員1期の経験がある柳本氏。決まったのは、選挙の投開票日まで1カ月を切った6月23日だった。

自民党が5月に情勢調査した時点で、維新の2人を上回りトップだったのは太田氏。しかし、ゴタゴタの末に柳本氏が出馬表明した直後の7月調査では数字を落とし佐々木氏に抜かれた。結局、投票日直前には、宮出氏、杉氏よりも下になり落選となった。

「太田氏の出馬辞退と柳本氏の突然の立候補で、府連は大混乱のまま選挙戦に突入しました。一番の責任は、府連会長にあります」と話すのは前出の自民府議。府連会長は参議院議員の青山繁晴氏で、全国比例の選出だ。昨年10月の衆議院選挙で府内の小選挙区すべてで維新に敗れた自民党には、比例復活した1期目の島田智明氏しかいない。知名度のある青山氏の手腕に頼って立て直しを図っていた。

「大阪で長くテレビのコメンテーターを務めた青山氏のリーダーシップ、指導力に期待しました。しかし、まったくの期待外れ。自分勝手な意見を言うだけで、方針も示さずに事務方任せでした」(前出の府議)

その象徴となったのが、7月16日に石破茂首相が柳本氏の支援のために大阪でマイクを握った日だった。その府議がこう続ける。

「岐阜県、大分県などで石破首相の演説を断っているとの情報は知っていた。けど、選挙戦で劣勢の時に石破首相がお越しになる。それは喜んで受けました。ただ一人反対していたのが青山さんでした」

大阪府連では、石破首相の演説にあわせて《石破茂党総裁大阪遊説に伴う動員ご協力のお願い》という文書を配布し、動員を求めた。文書を出したのは、選対本部長でもある青山氏ではなく事務長の須田旭大阪府議。府連関係者が次のように解説する。

「石破総理の大阪入り前日、青山さんは党本部に電話して『自分は演説場所には行かない』と通告したそうです。実際、当日は演説場所に来なかった。いくら石破総理を党内で叩いているからといって、府連会長や選対本部長が横に並ぶのは当たり前のこと。それが人としての礼儀だ。形勢不利が明らかとなっており、青山さんは府連トップとしての力量がないことがばれてしまうことを恐れて逃げたんじゃないですか」

青山氏は、別の場所で選挙活動をしていたそうで、最後まで石破首相の演説場所には現れなかった。柳本氏の後援会幹部も「青山さんは肝が小さい。情けない。こういう人が府連会長では勝てませんよ」と話す。

青山氏はブログで《「府連会長が反対を表明し、かつ総理遊説に同行しない」ことを総理来阪の条件として明示し、党本部側に諒解されました》と書いている。しかし、ある自民党幹部は呆れ顔だ。

「了解なんてしていない。青山さんは反対したが、他の府連幹部は全員、総理を歓迎するのでぜひに、ということだった。青山さんは石破批判の急先鋒なのかもしれないが、それと選挙は別。府連会長という責任ある立場であることが分かっていなかった」

まさに、負けるべくして負けた自民党。大阪で2議席を確保してホームグラウンドでの強さを見せつけた維新。次の総選挙では、躍進した参政党も大阪の小選挙区すべてに候補者を擁立する可能性があることから、自民党関係者の顔は曇りがちだ。

「石破総理が演説した場所で、2日後に参政党がやっていた。明らかに参政党の方が集まりも多く、反応もよかった。これからは維新だけではなく、参政党対策も必要です。頭が痛い」

大阪選出の自民党国会議員は、島田氏と参議院議員の松川るい氏の2人だけ。松川氏も太田氏同様にスキャンダルまみれなのは知られるところだ(既報

大阪選出の自民党国会議員が「ゼロ」になる日が来るかもしれない。

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