100条委の裏舞台メール入手|ふるさと納税不正の洲本市、市議会も隠蔽姿勢

「これが真相を究明する委員会とは、情けない」――そうため息をつくのは、兵庫県洲本市の職員Xさん。兵庫県洲本市は、ふるさと納税で兵庫県内最多の78億円を集めたが、一方で、返礼品の調達費を寄付額の3割以下とする国の基準に違反していたことなどを理由に、2年間、ふるさと納税制度から除外された。そのデタラメぶりは、本サイトで報じた通りだ(既報)。その洲本市と市議会が、とんでもない暴走を始めた。

■100条委非公開は市民への背信行為

ふるさと納税について洲本市の第三者委員会が出した報告書では、制度を無視し、なりふりかまわず納税額を増そうとした洲本市の姿勢を厳しく断罪。返礼品の調達費を寄付額の3割以下とする総務省の基準に反していたのは、373品目に上ったという。返礼品の中身もデタラメで、洲本市では絶対にとれないマグロが含まれていた。

名産の淡路牛を1頭買いして大量の在庫を保有し、「返礼品のために牛一頭買いを行うことは前代未聞だ」と第三者委員会は指摘。ふるさと納税のとんでもない実態について検証するため、市議会が「100条委員会」を設置した。

100条委員会は地方自治法第100条で規定された都道府県及び市町村の「調査権」を行使するための特別委員会。一般的には、大きな問題が生じた時にだけ設置されるもので、例えば「サウナ市長」で有名になった大阪府池田市が冨田裕樹元市長の市庁舎私物化を調査した際のケース(既報)や、2021年に静岡県熱海市の土石流災害における市の対応などを調査したケースなど重大事案で設置されることが多い(既報)。

直近では昨年、福岡県田川市議会がゴミ収集運搬業者を選ぶプロポーザルを巡る疑惑を解明するため100条委を設置。当時の同市執行部が関連書類の隠蔽に走ったことで、3期目を目指していた現職が4月の市長選挙で惨敗する事態を招いている。

役所や議会が市民への説明責任を果たす上でも、100条委員会は公開するのが普通。しかし、洲本市議会はこれを「非公開」にして議論を進める構えで、冒頭でXさんが嘆いたのは同議会のこうした隠ぺい体質についてだ。

ハンターでは、100条委員会の委員に送付されたというメールをXさんから入手した。そこには、『11月15日午前10時から』『11月17日午後1時30分から』『11月20日午後1時30分から』と、100条委員会開催日の三つの予定が記されている(*下の画像)。

次のメールには《傍聴可能な特別委員会は、令和5年11月20日(月)に開催する会議のみです。先に送信いたしました内容と本メールの内容については、取扱注意でお願いいたします。》――発信元は洲本市市議会の事務局である。

2件のメールは、公開が原則なはずの100条委員会を、非公開にした証拠だ。同市で市議を務めるZさんが、次のように憤慨する。
「100条委員会を非公開にするなんて、信じられないことです。さらに問題なのは、一部の議員にしか参加を認めていないこと。他の自治体の前例を調べてみましたが、全議員が出席可能の状況で開催されたのが大半です。ふるさと納税の不正事案という社会の注目が集まっているものですから、洲本市議会の100条委員会も全議員出席で開くべきなのに、本市では各会派の代表者しか出席できません。当初は、市議会の小さな部屋で開催する予定でしたが、それは“部屋が小さい”という理由を付けてマスコミを制限しようと考えていたからだそうです。さすがに報道側から反発があって本会議場での開催になりましたが、そこに座れるのは委員長、副委員長と各会派から選ばれた市議のたった計6人です。18人も市議がいるにもかかわらず、たったの6人。これでは100条委員会の意味がない。市民への背信行為です」

前述した第三者委員会の最終報告書では、問題発覚時に副市長だった上崎勝規・現市長についても「疑惑」が浮上していることがわかる。洲本市の第三セクターで社長だった上崎氏は、市魅力創生課の元課長A氏と二人三脚でふるさと納税の寄付額アップに邁進してきたとされ、Zさんが、次のように内情を打ち明ける。
「上崎市長は、2022年3月の市長選の前に有力市議らと密会。副市長にはA氏を充てる考えを示していたと聞いています。それが、ふるさと納税のデタラメが明らかになったとたん、A氏を懲戒免職にして切り捨てたんです。100条委員会では、上崎氏とA氏を徹底的に調査しなければならないと思っています。しかし、有力市議らの目的は、100条委員会を設置して、厳しい対応をした“格好”を示すこと。兵庫県や総務省に対して、やっています感を出して早々にふるさと納税に復帰する魂胆です。だから、大きく目立つような形は避けたい。だから11月15日と17日は非公開なんです。ふるさと納税では、返礼品絡みで儲かり、笑いが止まらない市議もいます。その市議が関係する返礼品は、『産地偽装ではないか』と市民から声が出ています。情けない限りです。内情をすべて知るA氏も、ふるさと納税が復活した際には、なんらかの処遇をして口止めするという噂さえあります。だから、6人の市議しか出席させない。開催しているのに日程も発表しない。市民を愚弄するにもほどがあります」

裏には、自民党有力政治家の影もちらほらする洲本市のふるさと納税問題。本来なら、徹底的な検証と調査そして刑事告発の権限さえ有する100条委員会を、「茶番劇」に終わらせようとしている洲本市と市議会。この悪だくみを許してはならない。

 

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