相変わらずの牽強付会|「強要・脅迫」の火消しに走る永原譲二大任町長

 先月23日、田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長)が整備を進める“ごみ処理施設”に関連する文書の情報公開を巡って、永原譲二大任町長が村上卓哉田川市長に「開示しないよう」強要し、“言うことを聞かなければ両自治体の連携を止める”、“田川市のごみは受け入れない”などと「脅迫」とみられる行為に及んだ(既報)。

 指定暴力団の企業舎弟から首長に成り上がった永原氏による行為は、田川市民の暮らしを盾にした卑劣極まりない「強要」「脅迫」。田川市議会の有志が刑事告発する意思を表明したことで慌てたのか、息のかかった役人らを総動員して永原氏自ら“火消し”に動かざるを得なくなった。

■田川、川崎両議会に全員協議会の開催を要求した永原氏

 騒ぎの大元は、問題のごみ処理施設だ。永原町長は、その関連書類を非開示にした理由を文書化して田川市に発出していたが、今年3月の市議会厚生委員会で配布されたあと回収されていたため、佐藤俊一田川市議が同文書を情報公開請求。これを聞いた永原町長が田川市役所を訪れ、「非開示」にするよう村上市長に圧力をかけていた。

 この暴挙に市民はもちろん、複数の田川市議が猛反発。県庁で会見を開き、永原氏を刑事告発する方針であることを表明している。

 不当な圧力をかけてまで永原氏が隠したいのは、ごみ処理施設建設工事の詳しい内容を示す文書。これまでは暴力を背景にした「力」で、地域の不平・不満を抑え込んできた永原氏だったが、今年4月の田川市長選で3選を目指した義弟の二場公人氏が大差で落選。6月に行われた「福岡県町村会」の会長選挙では、5選が確実とみられていた永原氏自身が敗北するなど影響力低下が顕著となったことで、ごみ処理施設に関する疑惑が公然と語られるようになっていた。

 こうした中、先月には川崎町の議会がごみ処理施設などの建設に関する情報を公開するよう求める議案を全会一致で可決。5日の田川市議会でも、同様の議案が賛成多数で可決されている。

 なんとしてもごみ処理施設問題に終止符を打ちたい永原氏。考えたのが、開示を求める議決をした川崎、田川両議会で「全議員協議会」を開かせ、議決が不当であり、ごみ処理施設建設には何の瑕疵もないことを訴えることだった。

 両議会の議長は永原氏と近い関係。他にも永原氏になびく議員がいて、田川市・郡以外の自治体ではあり得ない、「独裁者の演説を聞く全員協議会」の開催が決まっている。目的の一つに、田川市長に対する強要、脅迫の否定が加わっていることは言うまでもない。(*下の画面は、田川市のホームページより)

 田川市長に対する強要事件のあと開かれた消防やごみ処理関係の会議で永原氏が主張の根拠として持ち出したのは、地方自治法が定めた事務委託についての規定。自治体の事務の執行・管理権を他の自治体に委託した場合、当然のことに委託した自治体が委託事務の執行権や管理権を失うのだが、永原氏は、権利のない自治体の議会が委託事務に関する文書を開示するよう求めるのは「越権」だと言い出した。

 自治体の議員なら誰でも理解している地方自治法の規定と、疑念が持たれる公共事業の正当性を検証することはまったく別の問題。ハンターは、ごみ処理施設建設工事の発注権を握った大任町長がその立場を悪用し、事業費を上乗せするなどして不正なカネを動かしているのではないかという疑いを持っており、田川市や川崎町の議員たちはそうした疑念を晴らすためにも積算書や施工体系図などの関連文書が必要だと言っているのだ。

 公共事業の正当性について説明責任を求めるのは国民の当然の権利であり、自治体がこれを拒否することは許されない。そもそも、何の問題もないと言い張るのなら、むきになって開示を拒む必要などないはずだ。牽強付会の主張を振りかざし、あたふたと非開示の正当性を説いて回ったり、関連文書の情報公開を進めようという首長を脅したりするのは、隠蔽が自身にとっての至上命題になっているからに他なるまい。

■独裁者の肩持つ田川市の市民生活部長

 困ったことに、落日の独裁者にも同調者はいる。ごみ処理施設を所管する田川市市民生活部の勢島伴睦部長は、永原町長が村上市長に圧力をかけた際に立ち会ったといわれている人物。12日朝、勢島部長に事実関係の確認を求めたところ、立ち会ったことは認めたが、「強要とかいうような感じには私はとれなかった」と永原氏を庇う。

 “町長は、佐藤市議の開示請求に応じないよう市長に強要したのではないか”と聞くと、「そのままの文書を出さずに、ええと、(村上)市長名で書いて、あの、ええと、そのなんて言いますか、情報を請求した人に出したらどうだという話を……」として、永原町長名の文書を、村上市長名の文書に書き変えて開示すればいいとする永原氏の主張を容認する。“それでは情報公開にならない”と指摘したが、最後まで永原擁護の姿勢を崩さなかった。勢島氏の視線は、田川市民ではなく大任町の町長室に向けられているとしか思えない。(*この勢島部長とのやり取りには別の問題が内包されており、別稿で詳しく報じる)

■「越権行為」を犯したのは大任町

 永原氏は、ごみ処理施設の建設工事に関する情報公開を求める田川市議会と川崎町議会の議会を、「越権行為」だと主張する。しかし、前述のように公共事業の内容を検証するのは議会人としての当然の努め。「越権」は低レベルの言いがかりに過ぎない。

 じつは、「越権だ」と言って騒ぎ立てている永原氏は、部下にとんでもない越権行為を行わせていることが明らかになっている。

 ハンターは先ごろ、6月末まで大任町の前総務企画財政課長を務めていた綿施茂樹会計管理者から連絡を受け、一昨年6月以前の入札結果を閲覧しに出掛けた。その時の顛末は7月7日の配信記事で報じたとおりだが、綿施氏には、入札情報の転載禁止や「知り得た情報は、他に漏らさないこと」という閲覧条件は公開したことにならず、記事化もできないとして是正を求めていた。

 12日、綿施会計管理者に“先日の閲覧制限の件はどうなった”と尋ねると、「担当課から連絡はありませんか?」と言う。“あなたの所管事項ではないから、答えられないということか”に対しては「そうですね」。ここで踏み込んで肝心の話を切り出した。

記者:管理者は、田川市の議会事務局に対し、14日の市議会全員協議会に村上市長、ごみ処理施設の担当部長である市民生活部長環境政策課長を出席させるよう求めたというが事実か?
綿施:そうですね。

記者:会計管理者であるあなたが、どのような権限で田川市長や田川市職員に全協への出席要請をしたのか?
綿施:……。

記者:会計管理者にはそんな権限はないはずだ。それこそ、永原さんがいう越権行為だろう。
綿施:……。

記者:だれの命令か?永原さんの命令か?
綿施:私の口からは、これ以上申し上げるわけにはいきません。

 永原町長の指示がなければ、所管外の会計管理者がよその自治体にあれこれ指図するはずはない。田川市や川崎町の議会人の行為に「越権だ」と因縁をつけ、自分の役場の職員にはルール無視の越権行為をやらせる永原氏――。永原氏の要請に従って全員協議会の開催を決めた田川市と川崎町の議長は、地方自治について勉強をし直したほうがいい。

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