福岡県大任町における政治や行政の実態について取材を始めて4年半が過ぎようとしている。町長として飴とムチで町内支配を続けてきたのは、指定暴力団「太州会」の企業舎弟からのし上がった永原譲二氏。強面だが、町内の新1年生にランドセル、誕生日にはケーキを配るなど人気取りに励み、ついには現金や米を支給するという“ばら撒き”までやり出した。
しかし、町民に還元される公金の額は知れたもの。その何倍、何十倍ものカネが永原氏の身内や側近たちの懐を潤している現実に、町民は目を背けたままだ。汚れた土着権力によって手厚く庇護される周辺業者――。そのうちの1社に町長のファミリー企業「2NE7」がある。
■ペーパー業者「2NE7」
町民の歓心を買うための施策を連発する一方、永原氏は票とカネを持つ建設業界を握るため、談合組織を作り上げ、自ら業者選定まで行うという横暴ぶりを発揮してきた。業者へのエサは仕事だ。1件の公共工事を無理やり細かく工区分けし、仕事を分配する仕組み。とりわけ優遇されてきたのは身内や側近たちで、施工能力を持たない「ペーパー業者」の存在まで明らかとなっている。そのうちの1社が、同氏のファミリー企業「2NE7」(ツゥエニーセブン)である。
永原町長は昨年8月、教育委員会がフィリピンのセブ島に中学生を派遣した際、実弟(以下、「J氏」)とその甥にあたる建設会社代表の男性(以下、「Y氏」)を伴って現地に旅行した(⇒こちら)。建設会社代表のY氏は、今年3月に行われた大任町長選挙で永原派の運動員として現金買収に走り、福岡県警に公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕されて罰金50万円の処分を受けた人物。親族でもあるY氏が経営する建設会社「ユウセイ」に対する永原氏の優遇ぶりは、これまで報じてきた通りである(既報1・既報2)
問題のセブ島旅行に同行していた町長の実弟J氏は、かつてユウセイのY氏が代表取締役に就いていた建設会社「2NE7」の実質的オーナーだと見られている。同社は、2022年(令和4年)頃から、仕事を丸投げして利益だけをとる“ペーパー業者”になったとされるが、永原町長はこの会社に対しても過分の肩入れを行ってきた。下が同社の受注実績である。

受注高は8年で約6億5千万円。21年頃までは従業員がいて現場の仕事をこなしていたというが、今は施工能力がない。実際に工事を行っていた当時の現場責任者は現在、大任町のごみ処理施設で職員として働いていることが分かっている。
2NE7の現在の代表者はJ氏の実の姉。前述したように、2015年(平成27年)2月までは、J氏の甥にあたるY氏が社長を務めていた(同年に辞任)。Y氏は2021年(令和3年)に個人事業主としてユウセイを創業。22年11月に法人登記して現在に至る。J氏も15年に2NE7の取締役を辞任しているが、同社の登記上の本社所在地はJ氏の自宅である(*下の写真)。J氏宅の表から確認可能な会社の看板はどこにもなく、建設資材や機材も見当たらない。資材置き場などはとうに売却されており、典型的なペーパーカンパニーだと見られている。

上掲の表にある通り、2NE7は2022年度に大任町から1件も受注できていない。「ある理由で永原町長から干された」(地元事情通)とされており、この時期に従業員が去り、不動産を整理するなど対応に追われていたという。町長の許しが出たのか、翌年度から受注が復活。ペーパー業者になった24年度からは、かつてないほどの受注高となっている。
再び重用されるようになったJ氏は昨年、永原町長のセブ島にも同行。今年3月の大任町長選挙では、違法なビラ配布の指示役を務めるなど永原陣営の中心として動いていたことが分かっている(既報3)。身内の操縦にも飴とムチー―それこそが永原流ということだ。
■業界支配の原資は税金
永原町長の建設業界支配は、東京地検特捜部の捜査対象にもなっている談合組織「田川政経研究会」を利用したもの。同会に加入して年間の会費を納めない限り、町の仕事は回ってこない仕組みだ。その結果が、下にまとめたペーパー業者や側近らの会社に対する巨額の工事発注だ。(*この表では2NE7を側近業者として整理)

何度も報じてきたが、町からパーパー業者や側近の会社に対する年度ごとの発注額は8年間で約80億5千万円というけた外れの金額。今年度分を加えると、さらに大きな数字となることが確実だ。悪質なのは、現在の2NE7のようなペーパー業者に一定の利益を与えるため、工事費に無用な上乗せが行われていること。ランドセル購入費やケーキ代とは比較にならない億単位の公金が、町長の周辺に還流している形だ。町民がふるさとの未来と今以上の暮らしの充実を考えるなら、こうした現実と正面から向き合い、「ダメなものはダメ」と声を上げ、正しい町政への一歩を踏み出すべきだろう。汚れてしまった土着権力の清浄化ができるのは、一人ひとりの町民の力。残念ながら、町政浄化のシンボルとされる「しじみ」にはできない話だ。

(中願寺純則)















